▼お祭りの始まり 朝霧「ルウシィさんいつもお祭り騒ぎじゃないですか」 ルウシィ「よし、You、実行委員長」 朝霧「あ゛ー!?」 紅葉国政庁のいつもの日々――01211102 ▼お祭りの布告 その日の朝、全都市船、海底都市でお祭り準備の布告が行われた。その放送が始まったときは国民も目を白黒させたが、要点を把握するなり、「ああまた藩王が何かやったんだなと」理解の色がその顔に浮かんだ。 まあ「本当にいいんですか?」と尋ねる広報官に「大丈夫だ、問題無い」と通達したのが良くなかったのかもしれない。 かくして国をあげてのお祭りが解禁された。 お祭りの要点は以下のように布告された。 /*/ ○紅葉国カジノ大会 (1)お祭り期間だけ使用可能なチップを発行します (2)チップは換金できませんが、お祭り期間中はカジノで遊ぶ事が出来ます (3)チップを一定枚数集めると以下のチケットと交換できます ・お菓子引き替えチケット ・フルーツ引き替えチケット ・玩具交換チケット ・レストラン無料チケット チケットはお祭り期間限定、協賛店舗で交換可能です (4)チップは換金不可であるため子供も参加可能です 「探せ未来のギャンブラー」 /*/ ○出張、紅葉国 (1)レンジャー連邦の特設ブースにて以下の出店を行います (2)名産品販売(フルーツ、工芸品、) (3)ビンゴチケット販売、中継 ビンゴ大会は紅葉国本国との連動企画です。 チケット購入者を対象にした大会で、以下の景品が当たるかも? (A賞)工芸品(鯨の骨で作った置物、木で編んだ籠、南国風染め物) (B賞)フルーツ盛り合わせ (C賞)紅葉国風スノーグローブ ▼あとのお祭り 「死ぬかと思った」 朝霧は速くもバテていた。 よく考えたら祭を開けば観光客も増える。増えるとなれば定期便の増加や警備強化もしなくてはならない。しかもこれは共和国の連動企画であるため中継を行う必要もあり、各方面を動員して中継所を設置、という手間もあった。当たり前だがチケット交換用の協賛店舗との交渉も済ませる必要があったし。 さしもの朝霧も、机に突っ伏していた。夢の中でも交渉しているらしく、うめき声が絶えない。 朝霧は反省した。「口にすることは考えよう。明日から」と思った。 ▼お祭りの様子 「ぎゃー! チップがー。吐け! 吐けお前! すぐ吐け! わーっ!?」 「だからそのスロット駄目だって言ったじゃん」 「違うんだ! お前はともかく僕には確かに見えたんだ! あの横一列に並ぶ七が!」 「はいはい」 三白眼の女の子が、うなだれた男の子の首根っこを掴んだ。歩いて行く。 胸を押さえていた大人達が一斉に溜息をついた。気持ちは一つだ。ああ、俺たちにもそんな時代があった。 女の子はいなかったけどな! (とか考えてそうだよなー) 路上の放映テレビで一部始終を見ていた朝霧は、は、いかんいかんと歩き出す。 大量の事務処理から逃げるべく、視察という名の逃走中だった。本当に視察してどうする。 ちなみにさっきのテレビは、ギャンブル熱が高まる紅葉国の様子をLive中継するという企画だった。全国八十八箇所以上に設置された中継用カメラは、見事に悲喜交々を流していた。何人かの大人達は辛そうだが、まあ、誰にでも甘酸っぱい思い出ってあるよね、と言い訳して考えない事にした。 市場で、安売りされていたフルーツを買う。このあたりは昔の紅葉国に近い。海底都市に、ぎっしりと詰まっていた頃だ。足の踏み場も無いような市場の光景は一度見るとなかなか忘れられない。今日はお祭りのかいもあってか、一時的に時間が戻ったようだった。 「盛況盛況、と」 これで事務処理さえ無ければなぁと思いつつ、視察を続ける。まあ本気でエスケープするわけにもいかない。一応戻る時間は身内には知らせているので、見るところ見たら戻らなくては。今日の仕事は裏方なのだ。 (思ったより混んでるし、誘導員増やした方がいいかなあ) ぼんやりと考えながら、雑踏を歩いて行く。 |